第116章 戦慄
どういう事?何があったの……?
とにかく私はグンタの無事を確かめるために側に寄った。
そして悟った。
―――――助からない。
「――――グンタ!!!!!」
その首は半分ほどまで掻き切られていて、血が噴き出している。
消え入りそうな、掻き切られた気道から漏れる呼吸音にかき消されそうな弱々しい声でグンタが最期の言葉を発した。
「――――ナナ、さ………逃げ……兵士……。兵長に………俺達が……守っ…………。」
「―――――っ………!!!」
無残に吊るされたその身体を降ろすこともできない。
時間は待ってくれない。
ただ側に寄って、立体機動ですれ違うその瞬間にその手に触れる。
失われていく体温と血液を、私は掬い取ることすらできない。
「―――ごめん、ごめんグンタ……!ここに、置いていく………っ……!」
私が声をかけると、グンタは最期にふ、と小さく笑った。
最期の最期まで彼は面倒見が良くて―――――こんな私に、俺のことは気にしなくていいから、どうか無事でと、そう言ってくれたのだと思う。
すれ違いざまにその首の切り口を見た。
巨人じゃない。
人間がやった。
それも―――――あの切り口は、立体機動装置の刃だ。
分かっていたつもりだった。
これは人間同士の戦争なんだって。
殺し合いなんだって。
それでも―――――信じきれない自分がいた。こうして、目の前で仲間が人間の手によって殺された瞬間を見るまでは。
「私は、私たちは――――――一体なんのために―――――戦って、なんのために――――――死ぬの………?」
私は込み上げる涙を堪えて最速でエレンたちの班を追った。