第116章 戦慄
「――――狙ってるのは、私たちじゃない……!」
「――――まさか……。」
エルヴィン団長のその想像の通り、リヴァイ兵士長の振るった刃をすり抜けた小型の巨人が、女型の巨人の足に食らいついて―――――その肉を引きはがし、食らい始めた。
「全員戦闘開始!!!女型の巨人を死守せよ!!!!」
エルヴィン団長の咄嗟の判断と指示によって、兵士全員で群がって来る巨人に対抗したけれど――――その数はゆうに数十体。
敵うはずもなく―――――、みるみる女型の身体は巨人たちに食い尽くされていった。
「エルヴィン……団長……。」
「――――想像以上だった。……全員一時退避!!!!」
「――――おいエルヴィン。」
巨人の返り血を拭いながら戻ったリヴァイ兵士長は、エルヴィン団長の表情を見て顔をしかめた。
エルヴィン団長のその表情は、好奇に満ちていたから。
「やられたよ。」
「なんて面だてめぇ……そりゃあ。」
「敵にはすべてを捨て去る覚悟があったということだ。まさか……自分ごと巨人に食わせて……情報を抹消させてしまうとは……。」
エルヴィン団長は巨人がまだ女型に群がっている間に撤退すると決め、指示を出した。
「ちっ………。審議所であれだけ啖呵切った後でこのザマだ。大損害に対して実益は皆無。このままのこのこ帰ったところでエレンや俺達はどうなる?」
「帰った後で考えよう。今はこれ以上損害を出さずに帰還できるよう尽くす。……今はな。」
「―――俺の班を呼んでくる。」
「待てリヴァイ。ガスと刃を補充していけ。」
エルヴィン団長が何かを深く考えた上で、リヴァイ兵士長へ指示を出した。
「時間が惜しい。十分足りると思うが……なぜだ?」
「命令だ。従え。」
「――――エルヴィン団長、リヴァイ班への伝達なら私が。」
「―――馬鹿か。この中で一番クソ弱ぇお前を1人で行かせるわけねぇだろ。」
「巨人が別のところにおびき寄せられている今なら行けます。」
「――――そうだな、頼もうナナ。ついでに、周りの兵士の様子も良く見て来てくれ。」
「はい。」