第116章 戦慄
「――――エルヴィン団長………この巨人は、まだなにも――――……諦めてない………。」
「なに………?」
「――――何かの最終手段を持ってるかも、しれない……リヴァイ兵士長、あまり近づかないで―――――!」
女型の巨人の頭上にいたリヴァイ兵士長に声を投げた瞬間、耳をつんざくような奇声で、女型が鳴いた。
「きぃやぁああああぁぁああぁぁああああああ!!!!!!」
一息分の奇声を吐き切って、女型はぴたりとその奇声をやめた。
「――――何………?!」
断末魔?だとしたらもっと死に直面した時に上げるものだ。
感情で鳴く?意味もなく?そんなわけない。感情で泣けるような人間の心をもっているのなら―――――、あんなに無残に人間を殺せるわけない。
そうなると限られてくる。
諦めてないのなら―――――同じく巨人化できる仲間を呼ぶためだ。
「――――呼んだ………?」
「ナナ……?」
「――――エルヴィン団長っ……もしかして―――――!」
私が言いかけた瞬間、ミケ分隊長が焦った様子でエルヴィン団長に向かって声を発した。
「エルヴィン!匂うぞ!!」
「方角は?」
「全方位から多数!!同時に!!!」
「そんな―――――………。」
仲間を呼んだ。
それでなくてもこの巨大樹の森の中には、ごく僅かな隊しかいない。
ここに巨人が群がったら――――全滅する。
「荷馬車護衛班!!迎え撃て!!」
エルヴィン団長の指揮により、アーベルさんを含む荷馬車護衛班が交戦しようと巨人の前に飛び出した。
でも――――まるで相手にせず、無視して巨人たちは女型の方へと接近する。
だめ、そっちには――――彼は今1人だ。
「リヴァイ兵士長!!!!」
思わず叫んだ私の心配も他所に、リヴァイ兵士長はまったく動じることもなく―――――何かを呟いた。
「――――巨人を使って逃がさせる気か……?ジャックの時みてぇに……。させるかよ。」
接近してきた2体の巨人の項を、事も無く一瞬で削ぎ切った。