第116章 戦慄
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ハンジさんの開発した拘束用兵器は確実にその女型の巨人を捕らえた。私は固唾をのみながらもその詳細を図解、記録し続ける。
「――――体のつくりがまるで違う……!巨人化したエレンと似ている。全速力で駆けたあの様子を見た限り、まるで人間と大差ない骨格と筋肉……。それにエレンとは比にならないくらい、思いのままに操っているように見えた。――――練度がある……?巨人を操ることを、訓練している……?」
心臓がざわざわと不安にさらされる。
けれど、震える手でなんとか書き記していく。
――――咄嗟に項を庇った……弱点まで理解している……やはり間違いなくこの項の中に、誰かいるんだ。
私がその記録を取り続けている間、リヴァイ兵士長とミケ分隊長でその項から中の人物を取り出すべく―――――項を庇う手をひたすら切り付けるけれど、一向に刃が通らない。
「――――体の一部を意として硬質化できるなんて……5年前に現れた、鎧の巨人がその名で呼ばれるようになった能力と同じ……。この硬質化もまた訓練次第で身にけたのか、それとも――――それぞれの個体で有する能力が違う……?」
エルヴィン団長がリヴァイ兵士長とミケ分隊長の斬撃で少しずつボロボロと朽ち始めた女型の手先をじっと見つめて、ある決断をした。
「――――ケイジ。発破の用意。目標の手を吹き飛ばせ。」
「はい、しかし……常備している物の威力では、中身ごと吹き飛ばしてしまう可能性があります。」
「ならば手首を切断するように仕掛けてみよう。合図を送ったら一斉に仕掛け、最短で起爆せよ。」
「了解!」
女型の巨人の両手首に起爆装置を準備している時に、なにやら嫌な感じがした。
固定用の杭で身じろぎ一つできないこの状況で――――おそらく私たちの会話も全て聞こえているはずで。
それなのに、身体を無理矢理動かそうとしたり、そういった “最期のあがき” をまるでしない。