第116章 戦慄
エレンに自分で選べと問いかけてからエレンが過去のことを回想するように、ぐ、と手を固く握って俯いた。
「エレン!!!遅い!!!!さっさと決めろ!!!!」
「―――――進みます!!!!!」
勇敢に戦ってくれた増援の1人もまた―――――あっけなく無残に殺された。
増援を壊滅させたその女型の巨人は、次こそエレンを捕まえる気だ。更に加速した。
「目標加速します!!!」
「走れ!!!このまま逃げ切る!!!」
あと30m。
気を抜けばエレンをかっさらわれる。そこで足を止められたら終わりだ。
「兵長!!!!」
「進め!!!」
ひたすらに前だけを見て全速力で馬を駆る。
女型の手がエレンに伸びたその時、ようやくその場所まで辿り着いた。
「撃て!!!!!」
エルヴィンの号令と共に、四方八方から対巨人用の拘束具が大量噴射される新兵器が火を噴いた。
立ち上る煙の中、女型が俺達を追って来ない事を確認して、エルドにこのあとの指揮を任せてエルヴィンの元に合流する。
「動きは止まったようだな。」
「まだ油断はできない。しかしよくこのポイントまで誘導してくれた。」
「後列の班が命を賭して戦ってくれたおかげで時間が稼げた。あれが無ければ不可能だった。」
「そうか……。」
「そうだ……。」
決して無駄にはしない。あいつらの死を。
その覚悟を示すための言葉をエルヴィンもまた静かに受け取った。
そしてその横にいたナナもまた、ぐっと小さく俯いて―――――、強い眼差しで前を向いた。
「あいつらのおかげで―――――、こいつの項の中にいる奴と会える。中で小便漏らしてねぇといいんだが……。」