第116章 戦慄
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―――――エレンが従順に俺達の言う事に従うなんて、端から思っちゃいねぇ。
あの地下牢で「とにかく巨人をぶっ殺したい」と言い放ったエレンの禍々しさは、何にも例えられないほどだ。
俺も散々と言われてきたがな。
“化け物” “異常” “人間じゃない”なんてことは。
その俺が認めるほど、エレンの――――、こいつの中には誰にも飼い慣らせない何かがある。
それに――――俺は、“仲間を信じること”が必ずしも正だとも思わない。
仲間を信じて死んだ奴もいれば、仲間だと思っていた奴に殺された奴だっている。
だが逆に、自分を信じて――――驕ったが故に大事な人間も失った。
だから分からない。
分かるわけがない。
結果なんて誰にも。
「――――俺にはわからない。ずっとそうだ。自分の力を信じても……信頼に足る仲間の選択を信じても……結果は誰にも分からなかった。」
だから俺は導き出した。
結果なんて選択を続けた先にある、無限の分岐の中の一つだ。それなら重ねる選択をただただ、悔いなく自分の意志で選び続ける。
「だから―――――、まぁせいぜい……悔いが残らない方を自分で選べ。」
自分で選べ。
ずっとお前に問い続けてきた。
なぁナナ。
お前の大事なエレンにも同じことを問う。
俺達一人ひとりが選んだ“悔いのない選択”が―――――どんな未来を創るのか。
それが行きつく先が俺たちの夢見た自由か、はたまた地獄か――――――、行くところまで行ってみるしか、わからねぇなら。
進むしかねぇだろう。
どれだけの犠牲を払ったとしても。