第10章 愛執
ナナが俺の胸ぐらを掴んだかと思うと、唇が、触れていた。不器用に、ただ唇を押し付けてくる。
「――――――おい、ナナ……っ……。」
俺の真似か、一度離した唇を、角度を変えて再び押し付けてくる。眉間に皺をよせ、一生懸命に俺を繋ぎとめようとしているようだった。
「――――――――語弊じゃ、なく………事実に……すればいいですか……?」
「――――――――!」
そこまでして、俺の側にいたい理由は、なんなのか。夢のためか。
だとしても、手に入れたい女にここまでされて、自制できるほど人間は出来てねぇ。
「こっちの気も知らねぇで煽りやがって………っ!」
ナナの細い腰を抱き寄せ、少し反れた上体に覆いかぶさるようにして唇を重ねる。
「――――――――んっ……ふ…ぁ…………っ……はっ………。」
舌を割り入れ、ナナの口内を犯すように食らう。
ビクターと、何が違う。
俺も、同じだ。
こいつの前では理性など無いに等しかった。
唇を離すと、ナナの目が潤んでとろんと俺を見上げる。初めて見る、欲情しているようなその表情もたまらねぇ。俺は瞼や頬、鼻先とあらゆる場所に口を寄せた。
耳に触れた時、ぴくんとナナの身体が跳ね、甲高い声を発した。
「ひゃっ……………!」
ナナは顔を真っ赤にして自らの口を手で塞ぐ。