第116章 戦慄
「右翼索敵壊滅的打撃!!右翼索敵一部機能せず!!以上の伝達を左に回してください!!!」
「――――聞いたかペトラ。行け。」
「はいっ!!」
ペトラが離脱してすぐに、右翼の後方から黒の煙弾が放たれた。
「黒の煙弾?!奇行種が?!」
「エレンお前が撃て。」
「はい!」
「なんてザマだ……やけに陣形の深くまで侵入させちまったな。」
右側の背後から煙弾とともに嫌な気配が近づいて来る。
―――来い、そのまま。
そのバカでかい身体を纏った中身を、引きずり出してやる。
エルヴィンが仕掛けている巨大樹の森が見えて来た。あらかじめ別行動をさせていた拘束用兵器設置班が、そこで息を潜めて待っている。
俺達がこのまま適度な距離を保って奴をおびき寄せれば――――、その身体に大量に杭をぶち込んで身動き一つとれなくしてやる。
「兵長!リヴァイ兵長!!!」
「……なんだ。」
「なんだって……ここ森ですよ!?中列だけこんなに森の中に入ってたら巨人の接近に気付けません!右から……何か来てるみたいですし…。どうやって巨人を回避したり荷馬車班を守ったりするんですか?」
エレンが焦った様子で後ろから喚く。
「わかりきったことをピーピー喚くな。もうそんなことできるわけねぇだろ……。」
「え?!な、なぜそんな……!!」
「周りをよく見ろ。この無駄にクソデカい木を。立体機動装置の機能を生かすには絶好の環境だ。そして考えろ。お前のその大したことない頭でな。死にたくなきゃ必死に頭回せ。」