第115章 継受
入団当初に私が相対した頃のサッシュさんからは考えられない言葉だ。そして――――、私は知ってる。
エルヴィン団長も、リヴァイ兵士長も、ハンジさんもミケさんも、サッシュさんのことをすごく信じて、評価している。
リヴァイ兵士長がサッシュさんを特別作戦班に選ばなかった理由もなんとなくわかる。
――――自分が指揮しなくても、サッシュさんは最善を尽くして戦える。仲間を守れるほどの実力を持った人だからだ。
「――――まだリンファに顔向けできねぇからな。アーチを救い出して、この世界に自由を齎すためなら、何だって俺はやる。」
「はい………。」
さすがリンファの好きになった人だ。
見てるかな、リンファ。
「――――ナナ。」
「はい。」
不意にサッシュさんも、私を呼んだ。
「――――死ぬなよ。絶対に。」
「………はい!」
「………髪飾り持ってるか?」
「え?」
「リンファと同じやつ。」
「あ、はい……!」
「貸せよ。」
サッシュさんが手を出した。
私は慌てて胸ポケットからリンファとお揃いの髪飾りを取り出して、よくわからないままサッシュさんの手に置いた。
「――――リンファから聞いてた。お前といつも――――生きて帰れるように、壁外調査の前は、これ、結び合って願掛けしてたって。」
「………!」
「俺が代わりに願かけてやる。」
「…………はい!!」
嬉しくて嬉しくて、私は髪を触りやすいようにくるりとサッシュさんに背を向けた。
「あ………っと………、ナナ………。」
「はい?」
「か、髪……触っていいか………?」
「??はい……??」
何を言ってるんだろう、と首を傾げると、サッシュさんが顔を赤らめてちょっと怒った。