第115章 継受
ハンジさんから来た早馬で、兵器の演習は無事終了、兵器にもなんの問題も見られなかったため、そのままカラネス区へと搬入すると連絡があった。
演習に参加していた面々はそのままカラネス区入りし、まだ兵舎に残るその他の兵士のほとんどが―――――いわゆる、作戦を伏せられたまま参加する兵士達だ。
壁外調査のためのカラネス区への移動日はすぐにやってきた。
「――――ナナ。」
「サッシュさん!あ、いえ、サッシュ班長!」
カラネス区への移動準備中に、サッシュさんが話しかけてくれた。
「やめろよ、普通でいいって。」
「いえ、役職もちゃんと呼ばないと、新兵に示しがつきません。」
「そうかよ。」
サッシュさんはいつものように頭をぽりぽりと掻いた。少し照れてるんだろう。
サッシュさんはもちろん、作戦の本質を知らされている。
けれどサッシュさんの戦闘能力と状況判断力を買われ、捕獲時の捕獲班ではなく、ほとんどが作戦の本質を知らないまま巨人と闘うことになるその中での数名しか配されない、“本質を知っている班長”だ。
それはつまり―――――、本質の目的を達するためなら、何も知らない自分の班の兵士達を欺いたまま死なせる、ということだ。
「――――サッシュさん、大丈夫ですか?」
「あん?」
「………辛い立場になる、かもしれないから……。」
「――――舐めんな。そんな覚悟、とうに出来てる。俺は――――エルヴィン団長とリヴァイ兵長が率いる作戦なら、信じられる。課せられた役割を果たす。それだけだ。」
「――――サッシュさんは、すごいですね………。」