第115章 継受
「そう、でしたか………。僕は祖父からこの本を託されて――――外には、想像もできないような世界が広がっているんだと、そんな夢に満ちた話を聞かされて育ちました。両親ももちろんそうだったんでしょう。特に父は―――――その世界にいつか旅立つために、空を飛ぶ方法を研究していたようです。」
「空を飛ぶ方法を……?!」
「熱を使って、空気を温めて……という話を少しだけ聞きかじったことがあります。父と母は実験するために大掛かりな実験機も作っていました。でも――――僕はまだ小さかった頃だから、詳細はわからないんです。」
「そう………。」
エルヴィン団長が顎に手を当てて何かを思考した後、口を開いた。
「――――エレンと君は小さい頃から親しいのか?」
「はい、ミカサと3人……ずっと、小さな頃からの仲です。」
「君の家族とエレンの家族に交流は?」
「……いえ、それほどは。街で会えば挨拶する程度でした。」
「………そうか。その他に、祖父や父から聞いたことでなにかあれば教えてくれ。」
「すみません、期待に添えず………ただ僕は本当に――――、おとぎ話のように、夢物語のように楽しそうに話す祖父のことしか、あまり記憶にないんです。」
「謝らないでアルミン。まだ小さかった時のことでしょう?――――素敵な思い出として、大切にしていたらいい。」
「………はい、ナナさん……。」
アルミンとの短い密談を終えてアルミンが退室してから、エルヴィン団長は口を開いた。