第115章 継受
「――――アルミンのこの本はまるでおとぎ話にでもしようとしているかのようだな。想像や空想も入り混じって書かれている。忘れないように、物語にした、そんな印象だ。」
「そうですね。なにより――――この世界の言語で書かれていますから。この壁の中で書かれた本なのでしょう。」
「ナナのそれとは、出どころが違うな。」
私たちの会話に、アルミンが目を輝かせた。
「あの、ナナさんの……本には、どんなことが書かれていたんですか……?!」
「草木や乗り物の図解なんかが書かれた――――図鑑のようなものと、あとは外の世界の言語で書かれた絵本、なんかかな。もちろん見たこともない言語だから……なんて書いてあるのかは、わからないけど。」
「…………そんな、ものがこの世に……あったなんて……。」
アルミンは不安な表情こそ見せたものの、その心の大半を大きな希望が占めている、そんな顔をしていた。
小さく身体が震えているのは、恐怖ではなく確実な“期待”だ。エルヴィン団長と私は、そんな彼を見つめて小さく微笑んだ。
「私にその書物を継がせてくれたのは、ある老紳士だった。そして、その人の日記に、おそらくアルミンのお祖父さまと思われる人の名前が書いてあった。だから翼の日に声をかけたの。――――調査兵団に来てくれて、こうして話を出来る日を、ずっと待ってた。」
「…………。」
エルヴィン団長が私をちらりと横目で見て、僅かに笑む。