第115章 継受
「来てもらったのは他でもない。ナナから聞いているかもしれないが、私とナナはこの壁の外に、この私たちの世界以外の別の世界や文明があると信じている。――――その思想は元々、ナナが――――ある人物から、その真実を解き明かす意志と共に継いだものだ。」
エルヴィン団長のこの言い方で、私は察した。
「はい、ナナさんから少し――――……僕も、僕も同じです。僕は祖父からこの本を託されて――――。」
アルミンが自分の本をテーブルの上に差し出した。
「――――見ても?」
「もちろんです。」
エルヴィン団長がそれを手に取り、パラパラと中をめくる。
「――――なるほど。」
エルヴィン団長が私に本を開いて差し出した。
その内容を覗き見る。それは、ワーナーさんの書物とは少し属性が違うように見えた。
「ナナさんも、外の世界についての本を持っているのですか?!」
「……うん。でも、いつかそれが私自身を、この調査兵団を滅ぼしかねないと思って―――――処分した。もうこの世には――――ないの。私の頭の中にだけ、入ってる。」
「…………!」
アルミンは目を開いて生唾を飲んだ。
一冊の本が身を滅ぼす。そんなこと、身に覚えが無ければ鼻で笑うような話だ。けれど彼はそれを実感している。きっと祖父の死に疑問を感じているからだ。
「――――翼の日に言っていたよね。この本をアルミンに託したお祖父さまは、行方不明になったって。」
「………はい。」
「――――禁忌、だからな。この世界で――――、外の世界の話を持ち出すことは。」
「………だから余計に怪しいです。」
エルヴィン団長は再びアルミンの本に目を落とした。