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【進撃の巨人】片翼のきみと

第114章 日々 ※




「―――あまり新兵を誘惑しないでくれよ。」

「えっ。」



団長室に戻り、椅子にぎぃ、と腰かけてエルヴィン団長がため息をつきながら零した一言に驚いてしまった。何がどうやったらそんな風に見えたのだろう。



「なにがどうなってそう見えましたか……?」



私が少し不機嫌に唇を尖らせて、じとっとした目でエルヴィン団長を見つめると、資料に目を落としたまま、はは、と笑った。………そもそも難解な資料を読み解きながらこんなふざけた会話もできるなんて、この人の頭の中は本当にどうなっているのだろう。



「――――ジャンだったか?君を見る視線が普通のそれとは違う。」

「ああ……まぁジャンは元々健全な男子なのでそれなりに女性に興味はあるでしょうし……元々は……リンファのことを、勧誘行脚の時に出会ってから慕っていたんです。」

「そうなのか。」

「はい………。リンファの死を知らせた時は、とても――――ショックを受けていました。よく、入団してくれたなと、思います。」



少しの間を置いて、エルヴィン団長は目線を上げた。



「――――ああそういえば、カラネス区の宿舎の手配を頼みたい。トロスト区の時と勝手が変わるが頼む。そして3日後の兵器の演習の場所は―――。」

「はい、カラネス区から南西のウォール・ローゼ付近の農業地域の一角の使用許可を管轄地区長に申請済み、承認されました。演習後に兵器の問題が見つからなければ、もうそのままカラネス区へ先に届けてしまえます。ハンジ分隊長にもそのようにお伝え済みです。」



秘密裏に行う兵器の演習は、その場所一つでも気を遣う。作戦の本当の意味を知る兵士以外には兵器の存在すら知られてはならないし、演習場所も人目に付かない場所で且つカラネス区への搬入がしやすいところを選んだ。

出立地が、トロスト区が駄目ならカラネス区と口で言うのは簡単だけれど、実際のところ兵舎からの距離は倍以上だ。いつもよりも準備することも、移動に費やす日数なども格段に多い。



「――――まったく君はすごい。私の頼みたいことがなぜわかるんだ?」

「――――似てきたのでしょうか?」

「それは嬉しい。」

「いい補佐官を持って幸せですね?」

「まったくだ。」



私がふふっと調子にのった笑みを零すと、エルヴィン団長もまたにこりと微笑んでくれた。

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