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【進撃の巨人】片翼のきみと

第114章 日々 ※




――――壁外調査まで2週間を切った。

エルヴィン団長が練ったルートと作戦は、表向きはカラネス区から南下して兵站拠点を作り、その過程でエレンの力の有益さを立証する、と言ったものだ。



けれどその実態は――――巨人を避けるフリをして、徐々にルートを東に巻きつつ巨大樹の森に入り込み――――そこに仕掛けた罠に、巨人化した敵を誘い込み捕らえる、といった内容だ。

そしてこの調査兵団の中に敵が潜む可能性があるため、エレンの居場所を隠す。選び抜いた精鋭達以外にはこの作戦の本質も告げず、エレンの居場所もわざと違う場所に印した作戦企画紙を配布する。巨大樹の森に誘い出すまでの時間を稼ぐためだ。



ミケさんが作ってくれた隊編成も確定した。

だが大変なのはここからだ。

知らせる兵士と、知らせない兵士に分けて説明をしていく必要がある。この情報の取り扱いは厳重な注意が必要だ。

万が一情報が錯綜して―――――もし本当に敵がこの調査兵団の中に紛れ込んでいるとしたのなら、その作戦を全て逆手に取られる。調査兵団は、人類は終わると言っても過言ではない。



慎重に慎重に、少しずつ事を運んでいく。



ハンジさんが毎日寝る間も惜しんで技巧班との開発に明け暮れた兵器は、なんとか形になった。3日後、“今回の壁外調査の本当の目的”を知る兵士達のみを集めて郊外へ演習に行くそうだ。兵器の準備も滞りない。



―――――いよいよだ。準備は着々と進みつつある。



あと数日後には―――――得体の知れない敵と相対しているのかもしれない。目の前でまた、大切な誰かを失うかもしれない。そして――――自分も死ぬかもしれない。

そんな背筋の凍る思いを隠すように温かい紅茶の入ったカップを手に取り、誰もいない食堂でふっとため息をつく。

がやがやと廊下では声がして、とても賑やかだ。

人類の命運をかけた壁外調査前にしては活気があって、いつものあのどんよりとしたような、ピリッと張ったような独特の空気がない。



それはきっと―――――あの子達が、新しい風を吹き込んでくれたからだ。


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