第114章 日々 ※
エレンはそれから、古城に来てから今まであったことをぽつぽつと話してくれた。
リヴァイ兵士長を始め、リヴァイ班のみんなのことを話す時にはほんの少し笑顔も見えたりして、こんな中でもみんながエレンを気にかけてくれているんだろうと思った。
それから少しの昔話をして―――――夕日が沈み、夜の闇が訪れかけた時、不意にエレンが遠い目をして言った。
「ナナ。」
「ん?」
「――――触れて欲しい。」
「えっ。」
思いもよらぬ言葉に思わず驚いて声を上げてしまい、リヴァイ兵士長がぴく、と反応したのが目の隅で見えた。
どこを、どう触れたらいいのだろう……と思いつつその真意を問う。
「――――どこに?どうしたらいい?」
「ん………。」
エレンはそっと手を私に向けて差し出した。
握手?と思ってその手をとると、思いがけず指の間に指を差しこまれて、しっかりと掌が重なる。そして掌を合わせるようにして――――エレンは呟いた。
「―――――同じに見えるのにな。」
「…………?」
「―――――俺は、人の形をした―――――化け物なのか?」
「―――……ううん、同じ。ほら、掌も、指も。それに目も、鼻も、唇も、耳も――――全部同じ。」
「…………。」
―――――15歳の少年が、好奇と恐れの目を向けられて――――、実験続きで、少しずつ打ち解けつつあるとはいえ、周りは常に自分を監視している。
辛くないはずがない。
自分が“良くないモノ”だと、思い始めてしまうのも無理はない。
でも絶対に違う。
それを心の底から伝えるしか、私にはできないから――――、精一杯伝える。