第114章 日々 ※
グンタに案内された一室の扉を開けると、そこには古びた一室の黒板に書かれた長距離索敵陣形についてのペトラからの抗議を真剣な表情で聞いているエレンの姿があった。
きぃ、と扉の音が鳴ってしまった、と思うとすぐにエレンが私の方に顔を向け、勢いよく立ち上がった。
「ナナ!」
「あっ……ごめんねペトラ、あの、続けて……?エレン、ちゃんと座って聞きなさい。」
「ああナナさん、こんにちは!はい、じゃ続けます。エレン!座って!ほら!」
「あ、はい……。」
「――――ちっ、犬かよ。」
エレンが席に着くと同時に、気だるそうにオルオが舌を鳴らす。リヴァイ兵士長の真似?が相変わらずとても似ていない。
しばらくその講義の様子を一緒に見守っていると、外に出ていたリヴァイ兵士長も戻って来た。
エレンのその日の予定も無事終わって、ほんの少しエレンと2人で話せる時間を貰えることになり、私たちは森の木々の間に落ちて行く夕日を眺めながら、古城のほとりのベンチに座って話をした。
――――もちろん2人で、と言っても、話の内容は聞こえないだろうけれど視界の隅にはリヴァイ兵士長がいる。
「――――ここでの暮らしはどう?エレン。」
「――――ん、まぁ……ぼちぼち。」
「ぼちぼちって。」
私がふふっと笑うと、エレンが私の方に顔を向けてその目の奥を覗いたと思ったけれど、すぐにその視線は地面へと落とされた。
青々しい匂いのする風が、吹き抜ける。
「――――辛い?」
「………いや………。俺の力が人類の命運を分けるって、わかってる……だから、辛いなんて言ってられない。」
「そっか………。エレンは強いね。」
「…………。」