第114章 日々 ※
「いや。なんて言うか―――――、あの人の優しさって、最高に分かりにくいじゃないすか。」
「うん……それは激しくそう思う。」
私が真顔でグンタに向かってうんうんと頷くと、グンタはふっと表情を和らげた。
「監視という名目ではあれ、あの人は――――きっとエレンの辛さとか、痛みとかをわかってて……まるで寄り添うみたいに側にいるんすよ。」
「…………!」
「………まぁ言うことはキツイし、普通に蹴りますけどね、兵長。でも――――大事にしてるんだと思います。」
嬉しくて言葉にならない。
ごめんねエレン、私が嬉しかったのは――――あなたに対してリヴァイ兵士長が寄り添おうとしてくれていることが、じゃなかった。
リヴァイ兵士長のとてもとてもわかりにくい優しさを、こんなに理解してくれている仲間がいることが、たまらなく嬉しいんだ。
「なんすか?!なんでナナさんが泣きそうになってるんですか?!」
私はそんなに情けない顔をしていたのか。グンタがぎょっとした顔で慌てて廊下を歩いていた足を止めた。
「えっ、いやごめんね!嬉しくて………。」
「…………。」
「――――こんなに理解してくれる仲間がいて、リヴァイ兵士長は幸せだと思う。」
「――――エレンに優しい理由すけど。」
「え?」
「――――多分、ナナさんが大事にしてるエレンだから。」
「…………そんな……こと………。」
肯定も否定もできず目を丸くしていると、グンタはまたふっと笑って、言った。
「――――だから俺は嬉しいです。兵長が、大事なものを俺らに守らせる判断をしたことが。――――あの翼の日も、今も。」
「――――………。」
「……ま、最初俺らはエレンにビビりまくっちまったんで、ちょっと兵長をがっかりさせちまったかもしれないすけど。ここから信頼を取り戻しますよ。」
憧れの人から任される。それがどんなに嬉しい事か、私にもよくわかる。
それに――――グンタの言う、エレンへのわかりにくい優しさも想像に容易くて。どこまでも私はあの人に守られているんだと、胸の奥がじわりと熱くなる。
「――――エレンを、どうか……よろしくねグンタ……。」
「はい。任せてください。……やべ、話しすぎたらまた怒られる。さ、行きましょう!」