第10章 愛執
「嫌です!彼は今傷ついてる!!なぜ………あんな余計な事を………!」
「……お前がエルヴィンに報告した内容に基づいた、事実だ。」
リヴァイ兵士長は少しも悪びれることなく、言い放った。
「事実でも……!いたずらに彼を傷付けることはなかったでしょう………!私は、誰かを責めるために詳細の報告をしたわけでは、ありません!!」
「………誰も悪くなくて、悪いのは、自分を守れなかった自分……か?」
「……………。」
「お前のその自己犠牲には呆れる。」
「っ………!」
リヴァイ兵士長の鋭い言葉は、私の胸に突き刺さった。相手の事を思って、何がいけないのか。
私は珍しく、リヴァイ兵士長に食ってかかった。
「なるべく、誰にも傷ついて欲しくないと……っ、思う事の何がいけないんですか!そもそも私があんな不用心にあの場所に行かなければ……、……リンファさんを、呼ばなければ……!誰も怪我せず、誰も傷つかずに済んだのに……っ!」
私は無理にドアノブに手を伸ばした。
「それが、お前の危ねぇところだって言ってんだろうが!」
リヴァイ兵士長の大きな声と共に、肩を掴まれ、ドアに背中を押しあてられた。その迫力と、苛立ちの籠った瞳に射抜かれ、ビクッと身体が震える。
「お前があいつに犯されて、心身共に傷ついて、それをひとり黙っていれば丸く収まったと、本気で思っているなら……それは、俺やエルヴィン、ハンジ……ここにいる俺達を信頼してねぇ証拠だ。」