第113章 奏功
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「――――驚いた。こんなに集めたのか。一人で?」
ナナが帰ってきて報告した出資額を見て驚いた。想像していたよりも遥かに多額の出資を勝ち取って来ている。思わず良からぬ事を想像してしまって、満面の笑みで答えるナナに反して微妙な顔をしてしまった。
「はい!」
私の表情にナナが戸惑ったような顔を見せる。
「――――もしかして自分を犠牲にしたり、してないだろうな。」
「はっ?」
「――――………だとしたら怒るぞ。」
ないとは思うが、ナナの事を良くない目でみている支援者は多い。食事の誘いなどの手紙も相変わらずひっきりなしに届くし、翼の日で彼女を目にした支援者が、出資の見返りに壁外調査での成果ではなく、彼女に何かを求めても不思議じゃない。
私の質問の意図と、不機嫌な理由を察したナナが答える。けれど彼女もまた不機嫌そうだ。
それはそうか、自分の頑張りを疑われたんだから。
「してません。純粋にただただ交渉を頑張りました。」
「――――それはすまなかった。私の補佐官が優秀過ぎることを忘れていた。」
きっぱりと言い切るナナに安堵して、ふっと笑みがこぼれる。謝っても依然として顔をツンと背けたまま、不機嫌を露わにして唇を尖らせている。