第113章 奏功
小さく呟きながら私の兵服をきゅ、と掴んだロイは、まるで私がいなくなる事を怖がる少年のようだ。
あの日トロスト区の壁上でロイが呟いたけれど風に攫われて聞こえなかったのは、この本音なのかもしれない。
「――――この大事な半身を失ったら私も死ぬかもしれないの。」
「え?」
「――――断言できる。次にまた壁が破られたら―――――人類は滅亡する。それを起こさないために、ロイを――――お母様を、ハルを――――守るためになにかしたいの。だから行かせて。」
「――――死ぬならそれでいいよ。姉さんと一緒なら、死ぬのも怖くない。姉さんが知らない場所で死ぬなら、最期まで一緒にいたい。」
「――――それはすごく、強い愛情だね。」
「はぐらかさないでよ……。」
「ごめんね………。ありがとう、ロイ……。」
ロイはわかってる。
私がどうしたって止まらない、この屋敷の中でじっとしてるような人間じゃないってことを。
それでもこうして本音を零してくれて、嬉しい。
同時にそれに応えてあげない自分は何て非情なんだろうとも思う。
でも――――、これが私の選んだ道だから。
後悔しないように生きると決めた。
ロイが私を抱くその腕に力を強める。
ロイがその気持ちを和らげられるまで、ぎゅっと―――――抱き締め続けた。