第113章 奏功
「――――ぎゅってして、いい?」
「え?」
「――――ロイがトロスト区に来てくれて、嬉しかった。心強かった。頼もしかった。――――この目に見えない脅威とロイが闘ってくれているから、私は巨人と――――人類の敵と、心置きなく戦うことができてるの。」
「――――……別に姉さんのために疫病と闘ってるわけじゃないよ。」
ロイは頬を染めてフイッと横を向いた。
「知ってるよ。でも、私は嬉しい。それに次いつ会えるか分からないから―――――。ぎゅってしたい。だめ?」
「――――そうやって可愛い顔でエルヴィンさんを落としたんだ……。」
ぼそっと何かを呟いたと思うと、はぁ、とため息をつきながら前髪を掻きあげて、恥ずかしそうに目線を逸らした。
「いいよ、おいでよ。」
「うん!」
ロイに歩み寄る。
座ったままのロイの横に立つ私を見上げるロイは、まるであの頃の小さな可愛い弟のようで。照れつつも、彼の顔が“嬉しい”と言っているようで、たまらなく愛おしい。
その両手を伸ばして、ぎゅっと胸に抱く。
ぎゅうう、と力を込めて、そのふわふわした白銀の髪に顔を埋めて体温を感じ合う。
「――――苦しい。」
「うん。」
「うん、じゃなくて離すでしょ普通……。」
「やだ。」
「…………。」
ロイは呆れたように、私の腕を掴んでいた手を降ろした。
「――――死んだら許さない。死なせない。」
「うん、頑張る。」
「――――半身を失ったら僕も死ぬかもしれないって、思っててよ。」
「うん。」
「――――姉さん………。」
「…………なに?」
「――――嫌だ、戻っておいでよ………。」