第113章 奏功
今まで色々考えて来た。
結局この巨人の力を纏う人間がどこの、何を目的としているのかが一切分からない。
もしかしたら、以前仮説してみた、王政の連中が秘密裏に―――――この壁の中に民衆を閉じ込めるために開発した力なのかもしれないという線も無くはないけれど―――――……
そんな数多の仮説が立つ中でエルヴィンの「敵はなんだと思う?」という問に私が「外の世界」と答えたのは――――、巨人化する術を持っていたと想像できるエレンの父の名前がとてもとても焦ったような筆跡でワーナーさんの日記にメモされていた事実が、無関係だとは思えなかったから。
全く関係ないことをたまたま日記にメモしただけかもしれないけれど、ワーナーさんの性格を考えるとそれは違う気がする。あんな日記をもし憲兵に押収されたら即捕まる。そんなものを持ち歩いていたとは思えないし――――、雑多に情報を残す人じゃない。
関係しているから、あそこに書いた。
そして――――詳細を書かなかったのは、あまりにもその内容が―――――危険すぎる事実か想像だったから。
そう考えるのが、一番しっくり来た。
「グリシャ・イェーガー……ね。」
「うん。」
「悪いけど多分時間がかかるよ。いつまでいるの?」
「2日後には発つと思う。」
「………それまでには無理かも。王都の医学大学の履歴だけなら早いけど、その他区域の情報はそんな早くに集まらない。」
「うん、わかってる。手紙でもいい。知らせてくれる?」
「――――了解。」
ロイがふっと息を吐いて、片手を上げて承諾した仕草を見せた。
「――――ねぇロイ、もう1つあるの。」
「……なんだよ。強欲だな。」
立て続けの私のお願い宣言に、若干眉を寄せる。