第113章 奏功
王都に着いたのは夜中近く。
とにかく実家で休んで、翌朝から早速各支援者に会いに行く。馬を繋いでいると、変わらずハルが笑顔で迎えに来てくれた。とてもとても――――安心する。
「おかえりなさい、お嬢様。」
「ただいま。」
「お食事は?」
「いただこうかな。あと――――ロイは帰ってる?」
「はい、おいでですよ。」
ハルが食事を用意してくれている間、ロイの部屋を訪ねる。
「ロイ?入っていい?」
「どうぞ。」
扉を開けるとそこには、机の上に大量に積み上げられた書物と資料。ランプが灯ったその数々の情報や知見の中に埋もれるようにしていたロイが、顔を上げた。
――――随分変わった。
昔ロイの部屋は、何もなくて綺麗すぎて、まるで人が住んでいる部屋に見えなかったのに。
弟が疫病と闘おうとしていることがわかる。
その”生きる意味”を、成し遂げようと生き生きしている。
「――――どうしたの?」
ロイが椅子に背中を預けて伸びをしながら尋ねた。
「あのね、いつもいつも申し訳ないんだけど………。」
「また頼み事?」
「うん。頼ってもいい?」
「――――姉さんは本当に、頼ることが上手くなっちゃって……こっちは体がいくつあっても足りない。」
ロイが意地悪にふっと笑った。どこか、少し嬉しそうだ。
「ありがとう。」
「で、なにさ?」
「――――調べて欲しいことがあるの。“グリシャ・イェーガー”という人物が医師免許をとった年を。そして更に、どこの医学大学にいたのか、その履歴を。」