第113章 奏功
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王都への道中、馬で駆けながらこれからどうするかを考えた。いつもならエルヴィン団長やリヴァイ兵士長の横で並走しながら、新緑の美しさや色づく木々に目を奪われながらその景色の中を駆けていくのだけど―――――、今回は全く目に入らない。
なぜなら、頭の中がそれ以外の思考で埋め尽くされていて―――――、目からの情報に心を傾けている余裕なんてまるで無かったから。
支援者に会う時にはいつもならもちろん事前にアポイントを取ってからだ。
でも今回そんな暇はない。
行って直接交渉する。しかも相当に無茶な事を言う。
『作戦内容も、どんな兵器に使うかも言えないが、今すぐに追加の資金融資を考えて欲しい』
「………ふふっ……まるで……詐欺師さながら……。」
思わず笑いが込み上げる。
そう言えば、こういった支援者に一人で会いに行くことも以前エルヴィン団長に駄目だと止められたっけ。
時間がない、人手も足りない状況だからとはいえ、私に任せる判断をしてくれたことが嬉しい。そしてリヴァイさんも―――――、呆れた顔ではあったけれど、行くことを許可してくれた。
難しい状況なのは痛感しつつも―――――私は今、少しワクワクしている。どうしてやろうか。
絶対に資金調達をして見せる。
まるでエルヴィン団長が少し乗り移ったみたい、と思うと笑みも零れる。
「ハンジさんがきっと優れた兵器の開発を進めてくれる。だから私は―――――どんな兵器でも準備ができるような額の資金を調達する……!」
私が女であることと、厄介な身の上だったりすることもあって、そこに着け込んで見返りの要求をしてくる人もいるかもしれないけれど、ちゃんと自分の身も守らないと。
“自己犠牲”は仲間を信頼していないってことだと、私のいけない癖だと、リヴァイさんに何度も叱られたから。
――――なぜだろう、今までの調査兵団での思い出が次々に蘇るのは。
まるで走馬燈のようで、少し――――怖い。