第113章 奏功
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巨人が出現・消失する際に噴出する特有の蒸気の中、エレンに向けて確かな殺気を放って4人が抜刀して構えた。
――――初動として悪くない。
この判断が出来る奴らを、俺は選んだ。
だが想像以上に取り乱していた。
無理もねぇか、こいつらは今こうやって自分の目で見るまで、エレンが巨人になるところを見た事が無い。目の前で初めて出現した、理解の範疇を越えるそれはどれほどの恐怖かは、想像に容易い。
「――――落ち着けと言っている。お前ら。」
俺がその殺気を制しても、4人は口々に混乱したままエレンにあらゆる言葉を投げた。
「エレン、どういうことだ?!なぜ今許可もなくやった?!答えろ!!!」
「エルド、待て。」
「おいエレン答えろよ、どういうつもりだ!」
「いいやオルオ、それは後だ。俺達に……いや人類に敵意が無い事を証明してくれ。」
「え……?!」
「証明してくれ早く!お前には……その責任がある!」
グンタが責任追及を始める。エレンの混乱は増すばかりだ。さらにオルオも輪をかける。
「その腕をピクリとでも動かしてみろ!その瞬間てめぇの首が飛ぶ!できるぜ!俺は本当に…!試してみるか?!」
「オルオ!落ち着けと言っている!」
「兵長!エレンから離れてください!近すぎます!」
――――ペトラまで。そういやこいつらは兵士としては長けていても――――まだまだ年端もいかねぇガキなんだと、思い出した。
「いいや離れるべきはお前らの方だ。下がれ。」
「なぜです?!」
「俺の勘だ。」
勘だとは言ったが――――、どう見てもエレンが何かを企ててやったわけじゃないのは明白だ。
あの日の地下牢で少しだがエレンと話して、あの時の……ナナとの思い出を語ったり、俺の言葉に小さく嬉しそうな顔をしたこいつの表情から――――、俺達に害をなそうとするような奴ではないと思った。
それでもなお、4人の混乱から発される言葉は止まない。
ついにエレンも声を荒げ始めた。