第1章 出会
――――――――――――――――――――――――
時計塔に辿り着いた時、俺の頬に滴が落ちた。
雨は降っていない。見上げた先には、見たこともないような白銀の髪をなびかせたガキがいた。
俺は確信してその名を呼んだ。
「エイル。」
ガキは驚いた表情で塔の最上部から俺を見下ろした。
「オイ、落ちたらただじゃ済まねぇ高さだ。降りてこい。」
「だ、だれ………?」
ガキは少し怯えた表情を見せた。俺は目つきが悪いからな。こんな反応は慣れている。
「………リヴァイ。」
「………リ……ヴァ……イ……さん……?」
「じじぃ……ワーナーが心配してるぞ。あいつの家に行くなら、一緒に行ってやる。」
「ワーナーさんが………すみません、すぐに降り………」
慌てた様子で塔の中に引き返そうとしたガキの軸足が乗っていた石造りの淵はもろく、踏み込んだ拍子に崩れ落ちた。同時にガキの態勢は崩れ、塔から外へと小さな体が投げ出された。
「っ…きゃぁっ……!!」
「………!」
いくらガキでも、さすがにこの高さから落ちてきた体を受け止めるには無理がある。俺は咄嗟に近くの塀に飛び乗り、そこからガキめがけて跳んだ。
空中でガキを受け止めた後、塔の外壁を思い切り蹴って落下地点をずらす。
日よけのために張られていた布の庇に、ガキを強く抱き留めたまま背中から落ちた。
簡易的に張られていた庇は、もちろんその衝撃に耐えられるはずもなく、支柱は簡単にバキッと折れ、俺たちはそのまま地面に落下した。