第112章 狐疑
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エルヴィン団長の書きあげた作戦の概要をハンジさんとミケさんに話す。
もちろん誰が聞いているかわからない対策本部の一室だ。
扉前には、ナナバさんとモブリットさんが警備として付いてくれている。
「――――なるほど。そうなると5年前から生き残っている兵士達―――――総出撃人数の1割にも満たないね。他に敵の可能性として低い人物をもう少し引きこみたいところだ。」
「――――モブリットさんとゲルガーさん、ケイジさんは信じられると思います。確か調査兵団への加入についてはエルヴィン団長から打診されたんですよね?」
「そうだな、あの3人は普段の様子から見てもまるで怪しむところもない。」
「うん、いい感じだね。ただ全体の人数が――――負傷者もいるし、もう少し班を削る?エルヴィン。」
「――――もしかして……今季加入の新兵を連れて行くおつもりですか。」
「――――察しがいいな。その通りだ。」
「えっ、まだ加入もしてないのに!明日じゃなかった?勧誘演説。」
「ああそうだ。」
「――――そうかエルヴィン、敵は新兵じゃないとは言い切れない。むしろ――――。」
「明日の演説では、壁外調査が――――調査兵団という兵科がいかに過酷かをせいぜい語ってくるよ。そして――――エレンのこともね。」
エルヴィン団長は釣る気だ。
新兵の中に潜んでいるかもしれない敵を。
小さく策士の笑みを浮かべる。
以前は――――エルヴィン団長のこの顔が怖いと、思っていた。何を考えているのか分からない、時に冷酷で非情なことを考えている気がして。
でも今は―――――こんなにも何を考えているのかを理解できる。そして、その策士の笑みすら、私を安心させてくれる。
きっと大丈夫、この人の描いた通りに事が運ぶと、そう思わせてくれる。