第10章 愛執
「サッシュさん、痛い………です………。」
「なぁナナ、これからは絶対、俺が守るから…………俺のものになってくれ………!」
サッシュさんの、顔が近づいて来る。強い力で振りほどけない。
「っや………!サッシュさん………!」
顔を背けて、抵抗を試みる。
その時、冷ややかな声が飛んできた。怒りが込められた、彼の声だ。
「………おい。怪我人になにしてる……?」
リヴァイ兵士長だった。不機嫌に扉を足で蹴り開け、こちらに近づいて来る。
「兵士長………っ!これは……その……っ………。」
「……またお前かサッシュ。警告したはずだが?」
リヴァイ兵士長は腕を組んだまま、サッシュさんを見下ろす。だがサッシュさんは、リヴァイ兵士長の方を真っすぐに向き直すと、立ち上がって言った。
「……今回は、引けません。俺は、彼女が好きです。だから手に入れたい。個々人の恋愛に、兵士長であっても口は出せないものと思いますが。」
「………ほう。」
リヴァイ兵士長の目が細められる。怒ってる。空気が冷えたように感じた。
「………おおかた、『俺が守ってやる』だのなんだの言いてぇんだろうが。……そもそもお前は、今回ビクターが強行に及んだ経緯に自分が関係してる、なんて微塵も思ってねぇんだろうな。」
「………え…………?」
「……っ………リヴァイ兵士長!!」
私は慌ててリヴァイ兵士長を止めようとするが、聞き入れてもらえない。