第112章 狐疑
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エレンを古城に囲った翌朝。
また厄介な事が起きた。
昨晩からエレンを拘束して巨人の話を延々と聞かせ続けているクソメガネの元に、伝令が来た。その内容は、今回捕獲した被検体である2体の巨人が、何者かによって殺されたというものだ。
「――――ちっ……、さっそくか……。」
伝令にはエルヴィンからの言伝があり、エレンを連れてくるように、だと。エルヴィンがなんの意図もなく命令を下すなどあり得ない。行くしかねぇか。厄介者を連れてあまり人込みに行きたくねぇんだが、仕方ない。
「リヴァイ、来てすぐで悪いけど私は先に戻るね!」
「ああ。――――おいお前らも準備しろ。エレンを連れて一旦戻る。」
言われた通り実験場に戻ると、磔台からは跡形もなく2体の巨人は消えていて、それを嘆くハンジの声と野次馬の喧騒がうるせえ。そのうるせぇ喧騒の中から、聞こえてくる情報を集める。
「犯人はまだ見つかってないそうだぞ。夜明け前に2体同時にやられたらしい……。見張りが気付いた時には立体機動ではるか遠くだ。」
「だとしたら兵士2名以上での計画的犯行じゃないか。貴重な被検体なのにどこの馬鹿が……巨人に対する恨みからか?」
「――――いや全く、見当もつかん。」
エレンはただ動揺しながらその光景を眺めていた。こいつの今の様子から、このことに加担しているとは到底思えねぇ。そこにエルヴィンがやって来て、エレンに意味深な言葉を掛けた。
「エレン。」
「団長!これは……一体……?」
「君には何が見える?敵はなんだと思う?」
「……はい…?」
「すまない、変な事を聞いたな。」
そう言って、その場を去った。
――――なにかを探ってやがるな。これも次の調査の作戦を練るための過程か。だが、俺はそれを問い詰める気もない。
あいつは―――――任せろと言ったものは相当な完成度で実行する。それは分かりきっている。
今はあいつが頭の中で緻密に組み上げるのを待つ。
俺たちは再びエレンを連れて、古城に引き返した。