第112章 狐疑
次の日、エレンを囲う為の旧調査兵団本部の古城に赴いた。
兵長の話では、一か月後の壁外調査にてエレンの力の有用性を証明しなくてはならないらしい。けれどさすがに力の制御もできないエレンを調査兵団内に囲うわけにはいかず、他の兵士の目に触れないところ――――ということで待機場所としてこの旧調査兵団本部の古城があてがわれた。
「――――久しく使われていなかったので、少々荒れていますね。」
そこは酷く荒んでいて、まずは居住に適した状態にまで復旧するところからだ。
簡単な物の整理と清掃かと思いきや、兵長の求める掃除のレベルは高すぎた。
全員で手分けをして、隅々まで掃除をしていく。
――――意外すぎるそんなところも、性懲りもなく……とても好きだ。
エレンの部屋は地下室に決まっている。
それはどうやらエレンの身柄を引き渡す事が決まった審議の後に、更に細かく提示された条件に入っているらしい。
力の制御をできないエレンが、自身の意志と反して巨人化してしまったときに取り押さえられるように、とのことだ。
少しエレンと接してみて、この子自身が何かを企てたり――――、悪い事をしようとしているようにはとても見えなくてそこは安心したけれど、巨人化の力の正体がはっきりと分からない限り―――――、もし仮に外からエレンの力を、エレンを操れるのだとしたら――――、エレンの意志や人柄と関係なく、人類にとっては脅威だ。
だからリヴァイ兵長が付いているんだ。
上の階の掃除を終えて降りて来たエレンが、兵長と言葉を交わしてポカンとしている。