第112章 狐疑
調査兵団特別作戦班―――――通称リヴァイ班。
リヴァイ兵長に直接声をかけられた時は、天にも昇る心地だった。
ずっと願ってきた、女性としてでは無理でも―――――、兵士として、兵長の力になれる。そして兵長が私を認めてくれて、側に置いてくれる。こんなに嬉しい事があるだろうか。
最初の任務はトロスト区内に残された巨人の掃討。
なんのこともなく、リヴァイ班のみんなと兵長がいれば赤子の手をひねるようなものだ。
エルドさんとオルオ、グンタともここしばらく同じ班になることが多かったから、特に気心も知れていて――――連携も取れている。
エレンを調査兵団で預かると決まってから、さっそく地下牢でエレンの見張りに当たった。兵長が席を外している間はミケ分隊長とハンジ分隊長がいてくださるものの―――――、全員、内心穏やかじゃなかった。
だって正直―――――、得体が知れない。
巨人になれる人間?そんなものが本当に存在するのか。
あの日私たちがトロスト区へ帰着したときにはもう、事態の収拾はつきかけていたから――――、エレンが巨人化したところを私たちは見ていない。
薄暗い階段を降りて、かび臭くひんやりとしたその牢屋に入れられていたのは、少し生意気そうな目をした少年だ。
「――――あなたが、エレン……?」
「はい……。あの、あなた方は……?」
「これからエレンの側にいてくれる通称リヴァイ班のみんなだよ!エルドにグンタ、ペトラに……オルオだ。」
ハンジ分隊長がエレンに私たちを紹介してくれた。エレンは戸惑ったような顔で、ぺこりと頭を下げた。
「宜しくお願いします……。」
「――――……。」
「――――……。」
「――――……。」
「――――よろしく、エレン。」
エルドもグンタもオルオも、じっと品定めするようにエレンを黙って見つめた。