第111章 牽制
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「――――兵長、おかえりなさい。話は済んだんですか?」
「――――ああ。」
地下牢でエレンを見張っていたペトラたちのところへ戻ると、なにやら微妙な空気だ。無理もないか。こいつらにとっては、エレンは得体のしれない―――――いつ巨人化して襲ってきてもおかしくないとすら思うほどの未知の生物だ。
「――――俺が代わる。お前らは外の空気でも吸って来い。」
「……うん、リヴァイがいてくれるなら安心だ!よしみんな、ちょっと外で息抜きでもしよう。旧調査兵団本部でしばらく過ごすのに、必要なものも揃えなくちゃね。」
「はい……。」
「は、はい……。」
察したハンジが明るい声で俺の班の奴らを外に連れ出した。
エレンと2人きりになった俺は、椅子にぎぃ、と腰かけて腕を組む。そんな俺を見て、あからさまにエレンは緊張した様子でピン、と背筋を伸ばした。
「――――………。」
「――――………。」
沈黙が流れる。エレンがそわそわとしながら、目線を泳がせ始める。
「――――おい。」
「は、はいっ………。」
「――――お前は、一時期ナナと暮らしてたと聞いた。」
「はい…!」
「――――その頃から、あいつは頑固で聞き分けのねぇ、そして危機感もねぇ困ったじゃじゃ馬だったのか?」
「………はい……?」
エレンはなんのことだ、とばかりに目を丸くして首を傾げた。
「ナナだ。俺はあいつに手を焼いてる。お前にはどんな奴に見えていた。」
「えっ、その………ナナは………。」
エレンは過去を回想するように、思い出の中のナナのことを話し始めた。