第111章 牽制
「でも――――自由の空の下に、あなたと行きたいと言った……それを叶えさせて――――……絶対に死なないから………。」
「――――お前の決意など、なんの保証にもならない。」
「――――ナナを離せリヴァイ。命令だ。」
「――――………。」
「俺が、死なせないと約束する。」
エルヴィンの言葉に、リヴァイさんがぴく、と動いた。
「――――約束ではぬるい。誓え。ナナを、死なせないと。」
「――――誓おう、死なせない。」
リヴァイさんは心底面白く無さそうな顔をしながら、私を解放してくれた。私の手を引いて身体を起こしてくれ、ほんの少し目を細めて―――――、何か溢れ出る想いを噛み殺すような表情で、私の頬をいつものように、すり、と小さく撫でた。
「――――ちっ……了解だ、エルヴィン。」
エルヴィンの方に振り向いたリヴァイさんは、そう一言残して部屋を出た。
私はなんとも気まずい空気の中、乱れた衣服を整えつつも、エルヴィンの目を見られずにいた。けれどその瞳は、私から一切目を逸らさない。
「あ、の………本当に………ごめん、なさ――――………。」
言いかけたその瞬間に、思いもよらず大きな手が、私の頭をぽん、と撫でた。その手を辿ってエルヴィンの表情を見ると、微かに、でも柔らかく笑んだ。
「―――――兵士長に誓ったからな。必ず生きて帰ろう。」
「――――はい………。」
こんなにリヴァイさんが逼迫した様子を見せるのは珍しい。
私を大事に想ってくれているとはいえ、今までよりはるかに警戒色を濃くしている。
来月の壁外調査で一体なにが起こるんだろうと、私は言い知れぬ不安に駆られた。