第111章 牽制
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「――――何と言おうと、お前を行かせない。」
私のことを色眼鏡で見過ぎだと、私がいなくてもその世界の鮮やかさは失われないとリヴァイさんを諭してみても、納得はしてくれなかった。
結局また――――ぐぐ、と力を込めて私を押さえつけた。
いやだ、このままされるがままなのは―――――、精一杯の力で抵抗をしてみてもやっぱりまるで意に介してもらえずに、ただその仄暗い黒い瞳を見上げた。
その時―――――、ノックもなく扉が開いた。
――――震えた。
エルヴィンが、つかつかと部屋に入って来たから。
どうしようどうしよう、また、怒らせてしまう。
心を乱れさせてしまう。
リヴァイさんは一切動じず、私の上に覆いかぶさったまま横目でエルヴィンを一瞥した。
「――――またか、リヴァイ。」
「――――いいところだ。あと20分待てよ。」
「――――最愛の人を組み敷かれて、ああそうか、出直そうと―――――言うと思うか?」
「――――こいつが従順に『次の壁外調査には行かない』と言うように躾けてから、お前の元に返してやる。」
「そんな必要はない。ナナは俺と共に行く。どんな危険な調査でも、だ。」
「――――行かせねぇっつってんだろうが。」
あまりに張り詰めた空気の中で、冷や汗が止まらない。でも、でも言わないと。
「リヴァイさんが、私を守ろうとしてくれているのは――――……痛いほど、理解、してます……。」
「―――――………。」
私の言葉に、リヴァイさんはエルヴィンから目線を外して、再び私を見下ろした。