第111章 牽制
部屋の近くまで寄ると、話声が聞こえる。
何かを言い合っている―――――リヴァイとナナだ。
リヴァイは俺にナナの出陣を辞めさせることができないなら、直接ナナに話をつける気だろう。
息を殺してしばらくその様子を伺う。
すると、がたん、と机が動く音が鳴った。
――――以前もそうだった。
リヴァイが、我慢ならずにナナを組み敷いた時の音だ。
「あっ、やっ……やだ……!リヴァイ、さん……!」
微かに聞こえたナナがリヴァイを拒否する言葉。
あの日の俺の嫉妬に駆られての愚行を――――、その引き金になるようなことをナナが再びするとは考えられない。リヴァイがナナを失う事を怖がり過ぎて―――――、どんな手を使ってでも行かせないためにナナを組み敷いた、そんなところか。
「――――俺も人の事を言えないが、リヴァイもまた相当厄介な男だな……。」
ふっと笑みがこぼれる。
俺は永遠にナナを側に置きたい。
俺の隣以外で幸せに笑むナナなんて想像もしたくない。辛く苦しい道のりでも、凄惨な死であっても共に。
リヴァイは自分の隣でなくとも、ナナが生きて―――――笑っていられるならいいのだろう。
あんなに自分勝手に見えるリヴァイの、不器用すぎる、自己犠牲が過ぎる愛し方。
端から見れば意外に見えるかもしれないが、あいつのことを深く知っていれば、実に“あいつらしい”と、そう思う。
そして俺は、扉に手をかけた。