第111章 牽制
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――――リヴァイの問に、俺はなんと答えれば正解だったのか。
決してナナを死なせたいわけじゃない。
ナナの意志を尊重したい。
そしてその果てが死だったのなら、それもまた運命だと受け入れる。
リヴァイの気持ちもわかる。
ナナは兵士の中でも生き残る力としては群を抜いて弱い部類に入る。死ぬ確率も相当高い。
けれど少しだけ頭を過ったのは―――――、もし置いていって、俺達が巨人になれる敵に蹴散らされて全滅した時、残ったナナはどうなる。
泣いて泣いて泣いて、今度こそ精神を保てないかもしれない。共に戦って果てたかったと涙を流させるくらいなら、連れて行く。
リヴァイの言った通り―――――共に生きるなら、死も、共に。
こんな建前を並べてそれらしく取り繕ってみても、リヴァイにはお見通しだった。
そう、本当は―――――俺がもし死んだら、ナナはいつか他の男のものになる。
――――それなら、地獄まで連れて行く。
死んだって離さない。
死が二人を分かつまでの愛なんて誓えなかった、狂気的なまでのナナに対する独占欲を、俺は上手く隠したつもりだったんだがな。
相変わらずリヴァイの観察眼には舌を巻く。
ナナに頼んでいた資料の洗い出しもそろそろ終えた頃か。兵士の内の1人に使いに行かせるためにもそのメモを回収しなくては。
ナナが執務をしていた対策本部の中の空き部屋を訪ねる。