第111章 牽制
「――――エルヴィンは……っ……!」
「あ……?」
「あの日のことを――――ひどく後悔してるから……っ……、もう二度と……それにこんな大事な時に……乱したくないです……!……離して、ください……っ……、死なないように、精一杯努力、するので……!」
「お前の努力ごときで覆せるような現実じゃねぇ。」
「――――………。」
「それに―――――、乱されたくないのは俺も同じだ。だから行くなと言ってんだろうが……!」
とても冷たい目と声色で、私は何も言えなかった。
その時の冷たい目は、今までのリヴァイさんの様子とは少し違って―――――、私はゾクリとした。
案の定、私が書き物をしていた机にがたん、と音を立てて押し付けられ、両腕を簡単に頭の上で貼りつけて止められる。
「――――行かないと約束しないなら、その右手の指を折るか――――犯す。脅しじゃねえ。本気だ。」
「どれも嫌です……!」
「――――そんな我儘は受け付けない。」
リヴァイさんの唇が、私の首筋を這う。いつもよりも強く噛まれるその熱さに、少し怯えてしまう。
「あっ、やっ……やだ……!リヴァイ、さん……!」
「行かないと言え。」
「い、や……だ……!」
「なら諦めろ。」
「やぁ……っ、あの、誰か、来ます……から……!」
「知ったことか。」
その手はシャツの中で私の肌を滑り、胸を弄ぶ。その手の熱さも、力強さも全て私の身体が覚えていて、彼に教えられた通りに反応する。
その様子を見下ろしてなお痕を刻み続けるリヴァイさんの、息が荒い。
ただ欲望に任せての行為じゃない。
本当に行かせたくないんだ。ロイのところに戻る話を聞いた時にも、”行かせない”と言って抱き留められた。けれどその時とは温度感がまるで違う。
あまりにも危険な、過酷な未来を―――――
その本能で予知でもしているようだ。