第111章 牽制
ここに来る前――――――エレンがナナに手当を受けている間に、誰もいない地下牢でエルヴィンと話したことを思い返して、またなんとも言えない濁った感情が沸き上がった。
「次の壁外調査の策は私に一任してくれるかリヴァイ。」
「あ?」
「――――やるべきことがある。」
確かに今どこに何を企んでいる奴が潜んでいるのか分からない。今までのように頭を突き合わせて作戦を練るよりも、エルヴィンの脳内で組み上げ、最短で周知・実行に移すのが最も安全だろう。
それに元々こいつは―――――それが得意だ。
その目はどこか生き生きしていた。こいつのこの場面でのこの表情は、エルヴィン・スミスという男が曲者であることを物語る。
危機的状況であればあるほど、大胆で突拍子もないことを企んでいるときほど、こいつは生き生きとして――――迷わない。
その強さが、調査兵団をここまでの組織に育て上げた。
「――――構わねぇが。……どうせ俺はクソガキの子守で籠城だしな。作戦会議にも参加できそうにない。」
「そうか、そうだな。」
エルヴィンはふっと笑った。
「エレンのこと、宜しく頼む。おかしな動きは見せないと思うが――――、何か起こった時の判断はお前に一任する。」
「――――了解だ。」
「――――ではこれで――――……。」
「エルヴィン。」
背を向け立ち去ろうとするエルヴィンを呼び止めた。