第111章 牽制
「どうか、なさいましたか……?あれ、エレンは……?」
「今俺の班とミケとハンジがついてる。心配ない。」
「そうですか。あの、どうしましたか?どこか調子が悪いのですか?診ましょうか。」
リヴァイ兵士長の手をそっととると、小さくそれを口に出した。
「――――お前の大事なエレンに、すまなかったな。」
「え………。」
わざわざそれを言いに?叱られた子供のような顔は、申し訳ない顔なのだろうか。
「――――審議所で、俺を殺しそうな目で見ていた女がいたが。」
「ああ……。あれがミカサです。すみません、ミカサは………エレンがこの世の全てだから……兵士長に、あんな顔を……。でもきっと分かってくれます。必要な演出だったって。」
「そうか。」
「――――気にしてくださっているんですね。私も理解しています。むしろ――――……エレンを側に置いて下さって、ありがとうございます。リヴァイ兵士長は、この世でもっとも安心してエレンを預けられる方です。」
ふふ、と笑って見せると、少しバツが悪そうにリヴァイ兵士長は目を逸らした。
「――――そう言うな。もしエレンを殺さざるを得なくなった時に―――――躊躇いたくない。」
「………躊躇うのはそれは……私のせいですか……?」
「――――……そうだ。」
どこまでも私は彼に苦行を強いる存在だ。本当に、申し訳ない。
「――――ではその時は、エレンのとどめは私が。」
「あ?」
「――――言ったじゃないですか、あなたに苦しみを与えているのは私だけど……その苦しみを溶かしたいとも、思っているんです……。」
「………馬鹿言え。お前なんて巨人化して自我のないエレンならひねりつぶされて終わりだろうが。」
「………確かに。」
大口をたたいてみたものの、想像してみると全くもって説得力もなく実現できる気もしなくて、思わず噴き出して笑ってしまった。