第10章 愛執
「………俺はもう行くが、一人で大丈夫か。」
「はい、大丈夫です。行って……らっしゃい……。」
リヴァイさんは、静かに私の部屋を後にした。
一人になった私は、さっきの事を思い返す。
私を落ち着かせるためとは言え、口づけを―――――。
何度かその唇から逃れようと、押し返してもびくともしないリヴァイさんの身体。
分厚い筋肉から私よりも高い体温を感じ取れた。全てを反芻するようにひとつひとつ思い出す。私の頬が、急に熱を持ったのがわかった。
それと同時に、同じくらいひどく淀んだ黒い感情が頭をもたげて来る。
あの口づけを、アウラさんにも―――――――――?
身体を寄せ合って、彼女にも「可愛い」と言った………?
ただの部下で、いられる自信がない。
あの人の特別になりたいと、身に余る欲望が大きくなっていくのが分かる。私は今まで通り、振る舞えるだろうか……。
それからまた眠って、目覚めたときには日も暮れていた。アルルとリンファが、訓練から帰ってくる。私は笑顔で出迎えた。
「あのさ、ナナ。サッシュが、あんたに会いたいって言うんだけど……どうする?」
「わざわざ来て下さってるの……?もちろん、私は大丈夫だよ。」
リンファが扉をあけて、サッシュさんを通してくれた。サッシュさんは驚いた顔を隠せず、同時に悔しそうな顔をした。