第110章 審議
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――――審議の日の朝。
すでに審議所にいるエルヴィン団長とリヴァイ兵士長に代わって、ハンジさんとミケさんと共に地下牢までエレンを迎えに行く役を仰せつかった。
――――久しぶりにエレンに会える。
怪我をしていないだろうか、辛くないだろうか、そればかりが頭を過る。
「ナナ、そんなに慌てなくてもエレンは逃げないよ。むしろ逃げられないから!」
階段を駆け下りるように急く私を見て、ハンジさんがふふ、と笑う。
「あっ……そう、そうですよね……!」
「――――こういうところだな。」
「………ミケさん?」
「………エレンを欲情させるのは。」
「………だから誤解です……!」
自分の落ち着きのなさと、ミケさんの言葉に恥ずかしすぎて俯きながら、地下牢までのひんやりとした階段を降りる。
埃っぽい匂いと、じめじめとしたかび臭いような匂いがする。
――――こんな良いとは言えない環境の中で何日も閉じ込められて――――、辛いだろう、早く抱きしめてあげたい。
そう思うのは、未だに私がどうしても出会った頃の9歳のエレンを頭に描いてしまうからだ。
重厚な扉を憲兵の兵士達が開くと、そこには檻の中のベッドに両手を鎖で繋がれたエレンの姿があった。
「エレン!!!!」
「―――――ナナ?!」
エレンが思わず私の方に駆け寄ろうとするけれど、両腕を太い鎖で拘束されていて――――ジャラ、とその腕を引き留めた。
「うっ……くそ……っ……!」
「エレン、怪我しちゃうから引っ張らないで……!」
檻の鉄パイプを両手に握り締めて、檻の外から弟のように大事なその子を見つめる。