第110章 審議
「やはり我々の命運を左右するのは巨人だ。超大型巨人も鎧の巨人も、おそらくは君と同じ原理で―――――、人間が、誰かが操っている。」
「…………。」
エレンはごくりと喉を鳴らした。
「君の意志が“鍵”だ。この絶望から人類を救いだす“鍵”になる。」
「俺……俺が……。」
エルヴィンが突き付けた事実と意思確認を飲み込んで、エレンは俯いて身体を震わせた。自身に降りかかった責任の重大さに震えているのか、恐怖か。
「おい……さっさと答えろグズ野郎。お前がしたいことはなんだ?」
俺の言葉にゆっくりと顔を上げたそのエレンの表情は―――――狂気を孕んだ、まぎれもない化け物を宿した顔だった。
「調査兵団に入って……とにかく巨人をぶっ殺したいです……!」
エルヴィンが目を僅かに見開いた。
禍々しさはあれど、侮れないほどの意志の強さは感じ取れた。
「ほう……悪くない………。」
本当にナナがこいつを可愛がっていた?
馬鹿な。
こいつは化け物だ。
ナナの手には余るだろう。
決して誰にも従わない、誰も制御できない。そう、感じた。
だがだからこそ――――成し得ることもあるだろう。
「……エルヴィン。こいつの世話は俺が責任を持つ。上にはそう言っておけ……。」
エレンに歩み寄り、その目を射るように威嚇を込めて視線を捕らえる。
「俺はこいつを信用したわけじゃない。裏切ったり暴れたりすればすぐに俺が殺す。上も文句は言えんはずだ……俺以外に適役がいないからな。――――認めてやるよ、お前の調査兵団入団を――――……。」