第109章 対策②
以前ハンジさんも言っていた。
切り落とした巨人の首が異常に軽くて、おかしいと思ったと。
そう、巨人を何度も見て来て思ったけれど――――本来の見た目通りの重量が備わっているとしたら、とても二足歩行なんてできないようなアンバランスな姿の巨人を何体も見た。
まるでハリボテのようだ、そう思ったんだ。
「―――――例えば知性の無い巨人は実験体で――――、その中の成功被検体が、超大型巨人と鎧の巨人……?それにエレン……?だとしたら、外にはやっぱりとんでもない文明があるってことだ……。」
人間が生み出した禁忌の存在だと仮定してみる。
その想像はとても人道に反していて、私は初めて外の世界が“怖い”ところかもしれないという想像をした。
キラキラしたもの。
見たこともない文化。
会ったことのない人たちと言語。
想像もできないほどの未知と好奇に溢れている場所。
素敵なもので溢れていると思っていた。
巨人の脅威から逃れて外の世界に辿り着けば、みんなが笑い合える幸せな世界が待ってるんじゃないかと、子どもみたいに純粋に願っていた。
でも―――――、そこにだって人間の欲望があって、欲望があれば争いがある。
争えば殺し合う。
殺し合えば憎しみ合う。
私たちの夢見る外の世界とは、一体なんなのだろう…………?
答えのない問いが風に乗って去っていく。
「ワーナーさん、教えて……。私は、私たちは……何を信じて進めばいい……?」
遠い空を指差して、その空の下の素敵な世界を教えてくれる人はもういない。
沸き上がる苦しみと小さな絶望は否めない。
でも私には、たとえ目指した外の世界がどんなに残酷でも、恐ろしくても――――共に挑める仲間と愛する人がいる。
「――――わからないなら進んでみるしか、ないよね。」
私は小さく腹をくくって呟いて、少しでも手がかりを得るために実験に勤しむハンジさんのもとへ駆けた。