第109章 対策②
翌日。
捕獲した2体の巨人の実験を行うハンジさんの元に出向いた。その様子を遠目から見守る。
ハンジさんはその2体の巨人に“ソニー”と“ビーン”と名前をつけて、以前話していた意思疎通や日光の遮断、痛覚の確認等々様々な実験を行っていた。特に痛覚の実験に関してはハンジさんが泣き叫びながらソニーやビーンの身体に刃を突き立て、見ているこっちが辛くなるほどだ。
モブリットさんが常にハンジさんの側で、興奮のあまり巨人に近づきすぎたハンジさんが齧りつかれないように見張っている。
「分隊長!!近すぎです!!次こそ本当に食われますよ!!!!」
「いや見てよモブリット!!ソニーが、内向的なソニーが痛みをなんとか訴えようとしてるんだよ?!受け止めてやらないと、あまりに非道だろう?!?!」
そう言ってモブリットさんの制止を振り切ってソニーに近づくハンジさんに向かって、大きな口を開けたソニーがその腕を食いちぎろうとするかのようにガチッと歯を鳴らす。
「うはっっ!!あぶねっ!!!」
「だからって近すぎます!!!あんた人間なんですから、一度腕が捥げたら巨人みたいにまた生えたりしないんですよ!!!!わかってますか?!!?」
ついにモブリットさんが後ろからハンジさんを羽交い絞めにして無理矢理ソニーから引き離した。
その様子を見ながら、私は不思議に思った。
痛覚とは死に至らないように、身体に欠損や病気があると知らせるための信号だ。巨人は項を損傷しない限り、死ぬことはない。それなのに痛覚が存在すること自体が、私の目には不思議に映った。
あくまで仮説だけれど、殺戮兵器として人間が巨人を産み出したのなら――――痛みも恐れも知らない兵器のほうが、よほど恐ろしいのに。
「――――わざと、なのかな……それとも………ひどく不完全な―――――、実験段階の巨人ってこと……?」
巨人の存在自体がそもそも私たちの常識で考えられる範疇を越えすぎている。
なぜなら私は見た。
エレンが巨人化する時――――、そこになにもない、空間に突如その骨や筋肉が生成された。どうやったって、そんなことは不可能なはずなのに。