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【進撃の巨人】片翼のきみと

第109章 対策②




少し前まで、こういった作戦立案は全てエルヴィン団長の頭の中だけで行われていて、結果導き出された答えだけが知らされていた。

それが――――、ほんの少しずつ、こうやってリヴァイ兵士長やハンジさん、ミケさんの意見を織り交ぜて創られて行くようになった。全部じゃなくても、エルヴィン団長の頭の中の壮大な構想の中の一端であっても、その少しの開示は信頼を示しているように見えて、私は嬉しい。

そしてハンジさんやミケさんも――――以前のように気を使った、少し悲し気な笑みは見せなくなった気がする。





幹部会が終了して、幹部の皆さんが散り散りに宿舎の各部屋へ戻った。私は団長補佐としてできうる限りのことをしたくて、エルヴィン団長に付いて回っては書類の代筆や予定調整などをこなした。

深夜近く。

もう疲れ果てた他の兵士たちは早々に眠りについて、辺りは静まり返った中でエルヴィン団長のペンが走る音だけがする。その傍らに寄って、少し顔を覗き込みながら尋ねる。





「他にご用はありませんか?エルヴィン団長。」



「いや、もう今日はいいよ。ありがとう。」



「では、お休みになりますか?」





私が笑顔で問うと、記していた書類から目線を上げてエルヴィン団長はふっと小さく笑った。





「いや、まだ約束があってね。――――なぜそんなに嬉しそうに聞くんだ?」



「………ちゃんと、睡眠と休息をとって、欲しくて……。」





やっぱりまだ仕事は終わらないんだと知って残念に肩を落とす。





「――――この一連が終わったら、癒してもらうよ。その日が来れば君を寝かせてあげられないから、君も今のうちに少しずつちゃんと眠っておくように。」





エルヴィン団長はペンを置いて、私の前髪をくしゃ、と撫でて笑う。





「――――……そうやってすぐはぐらかすから、心配です。」



「――――君が側にいてくれるなら、私は大丈夫だ。」



「………わかりました。くれぐれも……ご無理、なさらず。」



「ああ。おやすみ、ナナ。」





いつもの団長室と勝手の違う対策本部内の一室で、秘密裏に小さなキスを交わした。

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