第10章 愛執
「言え。」
「………かわいい、かわいい………と…………………。」
勘に障った。
それは、もうずっと前から俺が抱いていても、言えなかった言葉だ。それを容易く言いやがって。
自制など、とうに効いていなかった。
俺は再び、ナナに深く口付けた。
「――――――――っ…ん……!」
「………ナナ………可愛い。」
「……え――――――――……んぅっ………はぁっ………!」
「…………可愛い。………お前が………可愛い。……可愛くて……っはぁ……仕方ねぇ……っ……ナナ………!」
その熱は言葉に出すほどに徐々に増していく。
時折、苦しいのか俺の身体を手で弱弱しく押し返そうとするが、俺は止められなかった。
ナナの口内に舌を割り入れると、身体がビクッと反応した。
これも、やられたのか。
ますますビクターへの怒りが込み上げる。
ナナは、怯えながらも俺を受け入れた。起きていた上体は力なくベッドへ倒れ込み、俺は覆いかぶさるようにして何度も何度も口づけを落とした。
俺はどうやら重症だ。
こんなにもこいつを、欲している。
許されるなら、このまま力づくで身体の感覚全てを俺で塗り替えてやりたい。このシャツの下の痣も、つけられた傷も全て。
あいつの感覚など吹っ飛ぶほどにその身体を愛でてやりたい。
身体の芯が溶けそうに熱く、心臓を鷲掴みにされるようなに昂ぶる感覚は、今まで一度も味わったことのないものだった。