第109章 対策②
「――――エレン自身を動かせる人物も、うちにはいるしな。」
「え?」
「エレンはナナに惚れているだろう?」
「――――えっ?!」
ミケさんが当然のように口に出したその内容に、エルヴィン団長とリヴァイ兵士長は目を見開いて硬直し、ハンジさんはまた面白いことが増えた、とばかりににやける顔を堪えきれずにいるようだった。
「えっ何それ本当に?!」
「ミケさん、そんなことは……あの、おそらく姉のようには慕ってくれていると思いますが……。」
「―――翼の日にナナに抱きついていた時に、エレンから好意と欲情の匂いがしたが。」
「欲情?!」
エレンから?そんなまさか。エレンは子どもで。弟で……何かの間違いだと思うけれど、ミケさんのその鼻は物凄い感度だ。私はその力を信じていることもあり、頭の中は軽い混乱を引き起こした。
そう言えばでも……恋人がいるのかどうかをすごく気にしていたことはあった……まさかそんな、エレンに限って………。と頭をぐるぐるさせていると、なにやら視線を感じる。
エルヴィン団長とリヴァイ兵士長の目線が痛い。
「――――……。」
「――――……。」
私は目を合わせることができず俯いた。
言葉にしなくても分かる。
2人共こぞって「またこいつは面倒を一つ増やしやがって」とでも言いたげだ……。
「あの……思春期のそれだと思うので……、大丈夫です、多分……。」
よく分からない言い訳を並べて肩身を狭くしていると、ハンジさんが軽快に笑って私の肩をがし、と抱いてくれた。
「そうだよ、思春期にはありがちなことだし!それにさ、エレンが調査兵団に入って、ナナが団長と兵士長の特別な存在なんだって気付いたら多分手も足も出せないでしょ、どうせ!あなたたち怖いから!!」
ケラケラと笑ってくれるハンジさんに、また救われる。
そうだ、例えミケさんの鼻が正しくても、私には揺るぎない想いがあるから大丈夫、ややこしいことにはならないはずだ。
「いやぁ、それにしても15歳から38歳まで惹きつけちゃうなんてナナは罪な女だねぇ。」
「いやハンジ、それを言うならリヴァイの方が上だ。幼女から老婆までだからな。」
「確かに!」