第109章 対策②
「――――確実とは言えませんが、エレンは5年前のシガンシナ区襲撃で、目の前で母親を巨人に捕食された時に―――――、巨人をこの世から滅することを誓っていました………あの日の彼の様子から、あれが演技だったとは―――――、到底思えません………。」
「――――そうか。」
「エレンに面会できるその日に、巨人化したエレンと行動を共にしていたミカサとアルミンの証言も耳にすることができそうだ。そこでもエレンが敵であり、我々を欺こうとしているかどうかの判断材料は集められるだろう。――――私の憶測では、おそらくエレンは何も知らない。むしろ――――超大型や鎧のように意志を持って我々に仕掛けてきている奴らにとって、エレンは想定外なんじゃないか。」
「想定外だったなら、次に狙われるのは間違いなくエレンだ。」
「――――………。」
エルヴィン団長の言葉から続くリヴァイ兵士長の言葉にゾクリとする。
そう、確かにそうだ。
エレンが私たちに味方するのなら、敵にとってこんなに厄介なことはない。その力を完全に使いこなせるようになる前に、早い段階でその芽を摘んでおこうと思うのは自然だ。良くない想像をめぐらせた通りに、いつでも巨人になれる人物がすでにこの壁内に潜んでいるとしたら―――――エレンの存在は、もはや壁内中に知れ渡ってしまった。いつ仕掛けてきても不思議じゃない。
「――――だからなんとしても、エレンは我々調査兵団で預からねばならない。エレンを守り、人類の反撃のためにその力を発揮させられるのは、調査兵団以外にありえない。」
エルヴィン団長の迷いない一言に、幹部の皆さんは揃って頷いた。
「面会の2日後にエレンの処遇を決定するための審議が行われる。そこでなんとしても――――、エレンの身柄をうちで引き取る。リヴァイ、協力してもらうぞ。」
「――――こういう面倒なことに、こぞってお前は俺を使うな。」
「そう言うな、人類最強がその威力を最も発揮する重要な局面だ。」
「ちっ……了解だ。」
エルヴィン団長とリヴァイ兵士長が組んで、想定通りに事が運ばないことは決してない。私はエレンが調査兵団に預けられることを確信する。
そこに、ずっと黙っていたミケさんがぼそりと口を開いた。