第109章 対策②
「――――……もしそうだとしたなら、巨人の力は外の世界とのつながりも考えられる。壁を二度破壊した超大型巨人と鎧の巨人と呼ばれるあれも、エレンと同様に人間が変異して巨人になったものと考えるのが妥当だろう、どう見ても知性があると見られている。言うなれば―――――、外の世界には、巨人になれる人間が存在するということになるのか……?」
エルヴィン団長の言葉に全員が息を飲んだ。
「そういう人種がいるってこと……?意のままに巨人になれる人種……?だとしても、知性のない子達もいる……あの巨人たちは一体なんなんだろう……。」
ハンジさんが喜々としつつ頭の中の疑問を口に出した。
もっともっと興奮冷めやらぬ様子で話をされるのかと思いきや、その表情は意外にも冷静だった。
今まで“わずかな情報からの想像と考察”だったものが、膨大且つ想像の斜め上の情報に、導かれる仮説が多すぎて興奮すらしていられないほど、彼女の頭の中は大忙しなのだろう。
それは私も同じで、考えられる事柄が多すぎて何から仮説してよいやら悩みつつ、ハンジさんの言葉に繋げて考えを口にする。
「エレンのように、普段はごく普通の人間として壁内に溶け込んで生活が可能なのであれば―――――、私たちの近くで、いつでも巨人になれる人物が、常に私たちの破滅を狙っているかも……しれないのですね……?」
「――――エレンもそっち側の可能性はないのか、ナナ。」
腕を組んだままリヴァイ兵士長が私を鋭い目で見た。
今までの、短かったけれどエレンと過ごした日々が頭の中を駆け巡る。
確かに私が知ってるエレンは彼の人生の中のほんの一部でしかない。それでも5年前のあの日、子供から発せられるようなものではない程の禍々しい殺気を放ちながら巨人の駆逐を誓ったエレンを思い出す限り、あの壁の破壊を知っていた敵側の人間だとは到底思えなかった。